福岡市内の出版社に勤めていた女性(31)が1989年、「性的な誹謗中傷を受け、意志に反して退職を余儀なくされた」ととして、裁判を起こしました。会社と上司の編集長(37)を相手に、慰謝料など総額367万円の損害賠償を求めました。

セクハラとパワハラの民事訴訟

この裁判は、セクハラとパワハラの民事訴訟です。裁判所は、福岡地裁です。原告側は「賃金差別などと同じ性的いやがらせだ」といって、支援態勢を組みました。被告は「いやがらせをしたことはない」と全面的に争う姿勢を見せました。

退職強要と裁判までの経緯

原告の女性は1985年12月、雑誌社の下請け出版社に入社しました。事務、編集を担当していました。1988年5月、退職しました。

訴えによると、上司の編集長は、仕事が終わらなくても残業を嫌って退社するような勤務状態でした。原告の女性らが穴埋めをしていたといいます。

昇給

会社は彼女の仕事ぶりを評価せざるをえなくなりました。その結果、1987年5月に昇給させました。編集長は逆に減給になったといいます。

「不倫している」と中傷

原告によると、このため、編集長は彼女をけむたく思うようになりました。1987年夏ごろから、従業員や取材先に対して「彼女は不倫している」「不潔な女だ」などと言いふらした、といいます。

それでも彼女は仕事を続けました。しかし、編集長から「そういう人物が会社にいるのは困る」と退職を強要されました。救済を求めた社長からも「明日から来なくていい」と言われた、といいます。

職場での性的いやがらせは憲法や差別撤廃条約に違反

原告側は、職場での性的いやがらせは憲法や差別撤廃条約に違反すると主張。編集長には長期間にわたるいやがらせで彼女の人格的尊厳を侵害し、退職に追い込んだ不法行為責任があり、会社には管理責任と不法行為責任がある、と訴えている。

弁護士

原告の代理人には、辻本育子弁護士が就任しました。「彼女は提訴によって新たないやがらせを受ける恐れや、興味本位の目で見られる恐れがあるため、氏名の公表を拒んでいる」としました。

これに対し、当の編集長は「減給になった事実はない。彼女を排除しようと思ったこともない。取引先との酒席で、知り合いの女性が不倫をしていると冗談を言ったことが一度あるが、彼女についてのうわさを広めたことはない」と、提訴の時点では、訴えの内容を全面的に否定しました。

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